ジョー・バイデン氏の大統領就任式を前にワシントンの街頭を歩く警備の兵士たち(2021年1月20日、写真:ロイター/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 米大統領選の結果を受けて1月20日、米国の首都ワシントンでは2.5万人の州兵が不測の事態に備えるなか、就任式が行われた。今回の大統領選の混乱にしても、そして就任式の警戒にしても、未曾有の政権交代劇であった。

 トランプ政権は交代直前に、台湾との間の官僚交流規制の撤廃を決め、中国のウイグル人弾圧を「ジェノサイド」と認定するなど、対中強硬路線を進められるところまで進めた。バイデン政権がもしもこの路線を後退させることがあれば、やはりバイデンファミリーは中国に弱みを握られているのではないか、と疑われるだろう。だから、当面はやはりバイデン政権も対中強硬路線をとらざるを得ない。

 だが、当然、トランプ路線をそのまま大人しく継承するつもりはないだろう。少なくとも貿易戦争、台湾問題については中国との折り合いを見つけていくタイミングを探るとみられている。また新型コロナ対策と脱炭素政策では、新型コロナをほぼ制圧したと胸を張りカーボンニュートラルをスローガンに掲げる習近平政権と、積極的に協力していくことになろう。

 そのため多くの識者が心の中で、今回の選挙の最大の勝者は中国習近平政権ではないか、と思っている。いや、習近平自身がそう思っているはずだ。だからこそ「時と勢いは我が方にあり」という発言が飛び出したのだ。

 1月11日、習近平は高級官僚向けの年初のスピーチで「世界はまさに百年に一度の未曾有の大変局を迎え、“時と勢い”は我々側にある。我々が通常の力と底力の在り処(ありか)であり、決意と自信の在り処でもある」「中国の発展は依然として重要戦略のチャンスを迎えている」と語った。また1月16日発刊の共産党理論誌「求是」にも「時と勢い」についての見方を寄稿している。