下院の2度目のトランプ大統領弾劾訴追を受け米議会議事堂敷地内に配備された州兵(2021年1月14日、写真:ロイター/アフロ)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 ジョセフ・バイデン新大統領の就任式を迎えた米国では、同時にドナルド・トランプ大統領に対する弾劾決議が議会にかけられている。任期終了で退任する大統領をなお追いかけて「解任」を求めるという異例の措置だが、この民主党側の動きには米国で反対意見も広く存在する。しかし日本の主要メディアはそうした反対意見をほとんど報じない。

見通しが立っていない上院での審議

 弾劾訴追案は連邦議会の下院に1月11日に提出され、13日に可決されるという異例のスピードで進められた。

 1月6日にトランプ支持者の一部が連邦議事堂に乱入した。トランプ大統領がその前の演説で「内乱を扇動した」として大統領解任を求めるのが弾劾訴追の趣旨である。

 表決では、共和党議員のうち10人が造反して大統領批判へと回り、賛成が232、反対が197となった。弾劾案はこれから上院に回されるが、1月19日の段階では、いつ上院に提案されるのかまだ決まっていない。

 上院では大統領解任には100人の議員のうちの3分の2の賛成が必要とされる。そのためには共和党議員50人のうち17人の造反が必要となるが、17人以上が造反する見通しはまずないとされる。またトランプ大統領の任期が切れる1月20日正午までに上院での審議が始まる見通しも立っていない。