1月18日、青瓦台の春秋館で年頭の記者会見を行った文在寅大統領。ここで日韓関係の正常化を強調した(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 昨年11月の大統領選で勝利したジョー・バイデン氏が、1月20日、米国代46代大統領に就任する。

 同大統領にとっての優先課題は新型コロナ感染の抑制、新型コロナに伴う経済への悪影響の緩和、トランプ大統領による国内の分断の修復、人種問題、気候変動への対応など国内問題が中心となろう。

韓国が現状のままならバイデン政権と深刻な対立を招く

 その一方で、外交問題については、核心は同盟関係の修復と強化、多国間外交への復帰が最初に取り組む課題であろう。既存の同盟関係を最大限重視し、関係を修復・強化して外交的懸案を解決していくことになる。

 米国にとって当面重要な外交的課題は、海洋進出を加速し技術覇権を狙う中国との関係、北朝鮮との核交渉、イランの核問題、気候変動対策などであろう。バイデン政権がこうした問題に取り組むにあたっては、同盟国である韓国が協力するのは当然のことと考え、期待しているに違いない。しかし、今の文在寅(ムン・ジェイン)政権の対米姿勢は、米韓関係の様々な側面で米国と対立する様相を呈している。

 問題が生じる根本的原因は、文在寅氏の政権が民主主義体制とは異質な強権体質による政治を進めていることにある。それは内政ばかりでなく外交の場面でも強く打ち出されている。そうした文在寅政権の政治姿勢の抜本的修正なくして、米韓の懸案問題の解決もない。その政治姿勢が現在のままなら、バイデン政権下で米韓関係はいっそう悪化する可能性が高い。

 ただ他方で文在寅大統領は、1月18日、青瓦台(大統領府)の春秋館で行った年頭の記者会見で、日韓関係の正常化を強調した。これまでも日韓関係の改善を望む姿勢を示してはいたが、この日のトーンはかなり踏み込んだものだった。その発言の意図は慎重に吟味する必要がある。

 まず韓国が米国との間で抱える懸案事項は次の点である。

 第1に、北朝鮮とどう向き合うか。

 第2に、北朝鮮の人権問題にどう対応するか。対北朝鮮ビラ散布禁止法への国際社会への批判にどうこたえるか。

 第3に、日米豪印のクアッドに協力する意思があるのか。

 第4に、日米韓協力が日韓関係の悪化で風前の灯になっている事態をどうするのか。

 これらの問題について見てみたい。