(英フィナンシャル・タイムズ紙 2021年1月15日付)

「ペンスを吊るせ」と議事堂前には絞首刑台まで用意されていた

 ドナルド・トランプ氏が1月6日の「米国を救う行進」であの悪名高い演説を行うために身体をほぐしていた頃、長男のドナルド・トランプ・ジュニア氏は後世のために動画を撮影していた。

 カメラは陽気なファースト・ファミリーの面々――大統領本人と長女のイバンカ氏、次男エリック氏とその妻ララ氏、そしてドナルド・ジュニア氏の恋人キンバリー・ギルフォイル氏――がローラ・ブラニガンの大ヒット曲「グロリア」に合わせて身体を揺らす姿をとらえていた。

 連邦議会議事堂の警備が突破される少し前のことだ。

 ドナルド・ジュニア氏は、この動画は「デタラメにうんざりしている、素晴らしい愛国者の皆さん」のためのものだと述べた。

 トランプ氏と自称「ファースト・ドーター」が、集会が始まるのを待つ群衆の映像に釘付けになっている様子も映し出された。

 締めくくりはギルフォイル氏で、行進の参加者に「正しいことをして――戦って!」と檄を飛ばした。

大統領が扇動し、家族がけしかけた反乱

 90分後、その言葉通りの展開になった。

 米英戦争で英国陸軍が1814年に米議会議事堂を荒らした時とは異なり、今回の冒涜は、現職の米国大統領が扇動し、その家族がけしかけたものだった。

 成人している2人の息子は大統領の前にそれぞれ演説し、大統領選挙を無効にする提案に反対票を投じた共和党議員は誰であろうと失脚させると宣言した。

 このうち、ドナルド・ジュニア氏の演説はあまりにも物議を醸す内容で罵詈雑言も多かったため、フォックス・ニュースが中継を途中で打ち切った。

 ただし、それはジュニアが「これはもう、あいつらの共和党じゃない。ドナルド・トランプの共和党だ!」と言った後のことだった。

 危険なのは、共和党がトランプ家の党に変身してしまうことだ。

 憲法学を専門とする学者の多くは、13日の議会下院での採決で共和党議員10人が弾劾に賛成したことを喜んだ。13カ月前の最初の弾劾訴追決議の時より10人多かったからだ。

 共和党下院議員全体に占める割合は5%にも満たないが、実際、「殺してやる」といった脅迫を受けていなければ、もっと多くの共和党議員が弾劾に賛成したはずだ。