(英エコノミスト誌 2021年1月16日号)

開設から230年の間に米国連邦議会下院が大統領の弾劾訴追を決めたことは2度しかなかった。
わずか13カ月間で、その数は2倍になった。ドナルド・トランプ大統領を2度訴追したためだ。
次は議会上院が、トランプ氏を有罪になる史上初の米国大統領にすることで、これに続く歴史的な懲戒処分を下すべきだ。
1月13日に下院で採択された弾劾訴追決議には、トランプ氏が反乱を扇動したと記されている。ここは一つ、一歩後ろに退いて、トランプ氏の行動がどれほど重大だったか考えてみるといい。
大統領が犯した罪の重さ
トランプ氏は大統領として、紛れもなく負けた選挙を覆すことによって権力にしがみつこうとした。
まず、今回の選挙は不正だとか、真実にこだわったメディアや裁判所、政治家たちは実は権力を奪おうと企む邪悪な陰謀組織の一味だといった大ウソを数カ月間に及ぶキャンペーンで広め、支援者らに信じ込ませようとした。
次に、選挙結果を覆すよう州当局者に圧力をかけ、それに失敗すると、自分の取り巻きとともに暴力的な群衆をけしかけて議会を脅迫させ、自分の要求をのませようとした。
そしてついには、その暴徒が議会議事堂に侵入して内部を捜索し、裏切り者のマイク・ペンス副大統領を絞首刑にすると脅すに至ると、トランプ氏はその様子を傍観し、助けを求める議員らの必死の嘆願を何時間も無視した。
民主主義国において、これ以上重い「犯罪」はなく、これ以上に反逆的な「不品行」もない。
トランプ氏は国家元首としての誓いに背いたことで処罰されなければならない。
もう二度と公職に就かせてはならない。処罰しなければ、2024年の大統領選挙に再び出馬する恐れがある。
そして、トランプ氏のまねをする輩が出てこないよう、合衆国憲法を踏みにじる指導者は米国からここまで激しく拒絶されるという前例になってもらわねばならない。