連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第33回。新型コロナウイルスの感染の急拡大が進む中、緊急事態宣言が発出された。しかし、すでに医療崩壊は起こっている――讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)が明らかにする医療現場の現実とは。

 1月7日、首都圏の1都3県を対象に緊急事態宣言が発出されました。その会見の中で菅総理は、「年末年始から本日に至るまで、感染者数は極めて高く、本日、東京では2400人を上回るなど厳しい状況であり、大変な危機感を持っております」と述べました。では、年末年始、具体的に医療の現場はどのように“厳しい状況”だったのでしょうか――私が勤務し、おもに重症患者を受け入れている自治医科大学附属さいたま医療センターや埼玉県の年末年始をお伝えしたいと思います。

 第三波が始まり、新型コロナウイルス感染症患者が増加してゆく中、当院では18床のコロナ専用のベッドを用意しました。年末に向けて感染が急拡大すると、その18床のベッドが、29日、30日、31日であっという間に埋まってしまいました。

埼玉県の病床の使用率(埼玉県ホームページより)
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 そのため、年明けには、重症新型コロナウイルス専用ICUを最大限に利用できるように、一般病床からの看護師の移動を行い、一般病床を減らしました。重症新型コロナウイルス診療には、少なくとも通常の2倍近い看護スタッフが必要なのです。予定入院や予定手術を減らさなければなりません。