(英エコノミスト誌 2021年1月9日号)

米上下院に乱入したトランプ支持者(1月6日、写真:ロイター/アフロ)

議会議事堂への侵入とジョージア州での民主党の勝利を受け、バイデン新政権がたどる道筋が変わった。

 ドナルド・トランプ氏は4年前、大統領に宣誓就任するために連邦議会議事堂の前に立ち、「米国の殺戮」に終止符を打つと約束した。

 その任期は今、議事堂に向けて行進するよう現職大統領が暴徒に促した挙句、彼らが暴力に訴えた後にはそれを称賛するという出来事をもって終わろうとしている。

 米国の民主主義の心臓部に重大な攻撃を加えた張本人がトランプ氏であることは間違いない。

 同氏のウソが不平不満を増幅させ、同氏の憲法軽視がその不満を連邦議会に向かわせ、同氏の扇動がそれに火をつけた。

 ベルリンやパリで人々が嘆く傍らでモスクワや北京で嬉々として放送された議事堂侵入の映像は、非米国的なトランプ政権時代を決定づけるイメージだ。

 議事堂での暴力の行使は、力の誇示を装っていた。実際には、2つの敗北を覆い隠していた。

 まず、トランプ氏の支持者がカギをこじ開けて侵入している間、議会は11月の選挙でのトランプ氏の明らかな敗北を承認する手続きに入っていた。

 そして暴徒が窓を打ち破っている間に、民主党支持者は、ジョージア州の連邦上院議員選挙の決選投票で普通であれば考えにくい勝利が2つも転がり込んできたこと、そして民主党の上院支配が実現することを祝っていた。

 暴徒たちの不平不満は今後、野党に転落する共和党員たちの間に広まっていくだろう。そして、1月20日に発足するジョー・バイデン新政権にも影響を及ぼすことになる。