連載「ポストコロナのIT・未来予想図」の第17回。金融や証券市場の機能は、お金がどう流れるかを制御する点にあるともいえるが、この面でデジタル技術が貢献できる余地は大きい。金融などのイノベーションに深く関わってきた元日銀局長の山岡浩巳氏(フューチャー取締役、フューチャー経済・金融研究所長)

 お金を運用する手段には、一般に預金や投資信託、債券、株式などがあります。これらの間にはさまざまな相違点がありますが、その一つに、「お金の出し手が、お金の流れ方にどの程度関わるか」という違いが挙げられます。

キャッシュフローを制御する技術

 銀行に預金をする場合、預けたお金がどこに貸し出されるかは、預金者ではなく銀行が決めます。投資信託であれば、その種類によって投資先がある程度絞られており、それに応じて投資家がどの投資信託を買うかを選びます。社債や株式に投資する場合、投資家は自分のお金が「どの会社」に流れるのかを自分で決めます。さらに株式の場合、株主としてお金の「使われ方」の決定にも関与します。

 また、投資されたお金が投資家に戻る側の流れをみると、預金については、一定の利息が銀行から帳簿上の預金者に支払われます。社債の場合は、企業から一定の利息が社債権者に支払われ、株式の場合には企業から剰余金の一部が株主に配当金として支払われます。また、多くの投資信託では、運用によって得られた収益から分配金が支払われます。

 このように、金融や証券市場は、お金がどのような先に向かい、どう使われ、どのように投資家に戻ってくるのか、そのフローを制御するインフラと捉えることもできます。こういったフローが確実に実現されるという信頼は、人々がリスクとリターンを考慮しながら投資の判断を行える前提になります。

 また、投資でなく寄付の場合も、お金が確実に意図した人々やターゲットに届けられることは、寄付をする側にとって大きな関心事です。