(英エコノミスト誌 2021年1月2日号)

遅れてきた巨大市場がITのおかげで世界最先端になろうとしている(写真は万里の長城)

万里の長城ならぬ中国の「グレート・モール」に電子商取引の未来が見える。

 西側ではここ10カ月間にわたって、50年前にショッピング・モールとスーパーマーケットが郊外の住民を征服して以来最大の買い物革命が進行し、富める国々の国民の大半がこれに加わった。

 パンデミックを機にオンライン・ショッピングの利用が急増し、実店舗からの移行が5年ほど早まったのだ。

 もう煙突はいらない。

 2020年のクリスマス・プレゼントは郵便受けから飛び込んできたり、玄関のドアの前に「置き配」されたりした。

 アマゾン・ドット・コムやウォルマートなど一握りの企業の従業員は、オンラインで受けた注文に応えようと超人的な働きを見せ、それらの企業の株主は超常的な利益を手にした。

 西側の小売業者が最先端を走っているという高揚感から、ウォール街で株が買い上げられているためだ。

規模、創造性、規制の面でもリード

 しかし、本誌エコノミストが今週号で論じているように、電子商取引(EC)の未来が模索されているのは、西側ではなく、中国だ。

 中国の市場は西側よりもはるかに大きく、創造性もはるかに高い。

 ハイテク企業がECやソーシャル・メディア、そして多種多様なその他のサービスを組み合わせ、8億5000万人のデジタル消費者が集うオンライン・ショッピングの中心地になろうとしている。

 規制の面でも、中国は最先端を走っており、市場独占を取り締まる国家市場監督管理総局は2020年12月24日、アリババ集団の調査に入ることを明らかにした。

 アリババと言えば、つい数週間前まで中国最大の時価総額を誇っていた企業であり、その共同創業者はこの国で最も称賛されている大物経営者、馬雲(ジャック・マー)氏だ。

 世界の小売業者は過去1世紀にわたり、新しいトレンドを――1970年代のリグレーのチューインガムの包装に印刷されたバーコードから、2010年代のカーダシアン家の消費習慣について行こうとする人々に至るまで――見つけるために、ずっと米国に目を向けてきた。

 しかし、これからは米国ではなく、東方に目を向けるべきだ。