2019年の春節時の広州市内鉄道駅の様子(著者撮影、以下写真は同様)

日本でもよく知られるようになった、中国の旧暦正月「春節」における大移動。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大時期と重なり、期間中の旅行者数は例年の半分程度にとどまった。2021年はどうなるのか。新たな動きも見られる春節大移動について、香港在住の加藤勇樹氏が展望する。(JBpress)

(加藤勇樹:香港企業Find Asia 企業コンサルタント)

春節の大移動は従来約10億人だった

 中国では旧暦の正月である「春節」が新たな年の始まりを表す大事な時期です。

 新暦の1月後半から2月後半が春節期間にあたり、中国全土で実家への帰省や春節休暇に伴う旅行などが一斉に行われます。世界でみて最も規模の大きい人の移動であると言っていいでしょう。この時期は職場や友人間で、年末年始の予定や鉄道チケットの予約が頻繁に話題にのぼります。

 この春節に伴う移動は、「春運」と呼ばれており、中国の交通機関や行政機関は春運に向けて多くの施策がとられています。増員される駅員や要所に張り出される運行状況の掲示板などは、大規模な人の移動の到来を予感させるものです。

「春運」に向けて各鉄道駅では臨時受付所や、赤い服を着たボランティアが活躍する(2019年撮影)

 春運が社会現象になったのは、人の移動が経済活動の成長とともに活発化した1980年代以降です。実家へ30時間をかけて帰省する地方出身者や、不休で働く鉄道職員のドラマが放送されるなど、中国国内ではある種の年中行事として定着しています。

 1979年には約1億人だった「旅客総数」は、1995年に約10億人に達し、2005年に約20億人、2017年に約30億人と急増してきました。

毎年の春運公式資料を基にした旅客総数

 この「旅客総数」は、交通機関を利用するごとに1人として数えられるので、注意が必要です。1人が1回の往復で平均約3回利用する(カウントされる)と言われているので、旅客総数を3で割ったものを、移動した延べ人数と考えればいいでしょう。以下では、この「3で割った数字」で記述します。

 2019年までの春節は10億人に達する人の移動がありました。これだけの人が移動するために、春運は40日間ほどの長い期間が設定されています。2020年の場合は1月10日から2月18日の40日間でした。この間、祝日は4日間程度しかありませんが、有給休暇などを利用して多くの人は1週間前後職場を離れます。