中国・北京にあるシノバック・バイオテックの研究所(2020年9月24日、写真:AP/アフロ)

(姫田 小夏:ジャーナリスト)

 世界の先頭を走るワクチンメーカーの1つに中国のシノバック・バイオテック(科興控股生物技術有限公司)がある。

 同社は多くの新興国で新型コロナワクチンの第3相臨床試験(不特定多数を対象に有効性を検証する試験)を行い、積極的な展開を図っている。だが、南アジアに鬼門の国が1つある。バングラデシュだ。シノバックはバングラデシュで資金ショートを引き起こし、試験計画が頓挫してしまったのだ。

世界各国で治験を展開するシノバック

 アラブ首長国連邦(UAE)、エジプト、ブラジル、インドネシア、さらには“インドの裏庭”とされているバングラデシュ、パキスタン、スリランカ、ネパールなど世界各国で、シノバックはワクチンの治験を大々的に展開している。

 中国の代表的週刊誌「中国経済週刊」は、「シノバックが海外での臨床試験に積極的なのは、中国製ワクチンにとって大きな潜在市場であるためだ」と報じている。

 今年(2020年)7月、バングラデシュの医学研究評議会はシノバックによる国内での臨床試験を承認し、8月末にバングラデシュ保健省がこれを認可した。シノバックは以降18カ月間にわたり、国際下痢性疾患研究センター(International Centre for Diarrhoeal Disease Research, Bangladesh、略称icddr,b)とともに、共同で臨床試験を行うことになっていた。

 このとき合意契約に盛り込まれたのは、「バングラデシュ側の4200人が治験に参加すること」であり、「第3相試験で安全性が確認された場合、シノバックはバングラデシュに11万回分のワクチンを無料で提供し、地元製薬メーカーに技術移転を行う」という条件であった。