(英フィナンシャル・タイムズ紙 2020年12月9日付)

共和党はトランプ党に成り下がってしまったのだろうか

 疑心暗鬼に陥った人間は世界を善と悪の戦いとして見る――。20世紀を代表する米国の偉大な思想家の1人、リチャード・ホフスタッターはこう書いた。

 完全な勝利に及ばないものは何であれ、パラノイアを深めるだけだ。

「部分的な成功でさえ、最初に抱いていたものと同じ無力感を残す」とホフスタッターは書いた。「それが今度は、相対する敵の膨大で恐ろしい資質への認識をひたすら強めることになる」。

 今日の米国の場合、敵はグローバリスト勢力と手を組んだディープステート(影の政府)だ。

 陰謀論者は(何の証拠もなく)、こうした連中がジョー・バイデン氏に有利になるよう大統領選挙を不正に操作したと信じている。

 問題は、その種の妄想癖がある人たち――世論調査を見る限り、共和党を支持する有権者の圧倒的大多数はパラノイアとして描写できそうだ――が散り散りになった恨みと化すのか、それとも政治的な破壊勢力になるのか、ということだ。

1950年代の「赤狩り」の記憶

 その答えが将来の米国政治の方向性を形作っていく。ホフスタッターの考察は、安心できる方向と心配になる方向の両方を指し示している。

 1950年代に数年にわたって米国の政治、メディア、学界、エンターテインメント業界を震撼させたジョセフ・マッカーシーの「赤の恐怖」(反共ヒステリー)を見た後、ホフスタッターは「米国政治のパラノイド・スタイル」理論を打ち立てた。

 選挙が盗まれたというドナルド・トランプ大統領の主張に概ね調子を合わせた今日の共和党政治家と同じように、マッカーシーの仲間の共和党議員も、同氏の赤狩りに対する懸念を胸のうちにとどめた。

 ドワイト・アイゼンハワー大統領もその一人で、大統領の地位と第2次世界大戦での大きな成果を武器に、酒でおかしくなったウィスコンシン州選出の上院議員と対峙しようとしなかった。