ワクチンの開発以外にも、COVID-19に対抗する研究は進みつつある。(画像はイメージ)

(サイテック・コミュニケーションズ 池田亜希子)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の収束の見込みが立たない中、各国で治療や予防を目的とした医薬品の開発が急ピッチで進んでいます。

 医薬品には安全性と有効性が求められます。そのため早期開発という観点から、どのような副作用が現れるかなど安全性がすでに明らかな既存薬剤について、COVID-19に対する有効性(疾患に効くか)を探索する研究が盛んに行われています。

 そのような例のひとつに、5₋アミノレブリン酸(5-ALA)があります。5-ALAは日本では脳腫瘍と膀胱がんの診断薬として承認されていますが、現在、ミトコンドリア糖尿病やミトコンドリア病への有効性を調べる臨床研究が行われています。また、各種ヘルスケア製品として10年以上前から販売されており、安全性が高いことが分かっています。

 最近の研究によって細胞レベルで効果が認められたとして(論文は査読中)*1、長崎大学がCOVID-19患者に対して5-ALAを用いた特定臨床研究を実施することになりました*2

*1:Sakurai, Y. et al. (2020) 5-amino levulinic acid inhibits SARS-CoV-2 infection in vitro. https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.10.28.355305v1

*2http://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/about/info/news/news3201.html

5-ALAの特定臨床研究がスタート

 2020年10月29日、⾧崎大学副学⾧(新型コロナウイルス感染症対策担当)泉川公一教授らが「COVID-19感染患者への5-ALA投与に関する特定臨床研究を行う」と発表し、現在、20歳以上のCOVID-19の軽症または中等症の患者50名を募集中です。

 臨床研究とは、臨床研究法で定められた「医薬品等*3を人に対して用いることにより、当該医薬品等の有効性または安全性を明らかにする研究」のことです。そのうち①製薬企業から資金の提供を受けて行われるもの、②国内で“未承認”あるいは“適応外”の医薬品等を用いて行われるもの、のいずれかに該当する場合を特に「特定臨床研究」と呼びます。