(英エコノミスト誌 2020年12月12日号)

コロナ禍に備え、莫大な資金を調達した企業。さて今度はどうなる?
産業界は今年3月、奈落の底を見つめていた――。
大手金融機関ゴールドマン・サックスの幹部で、グローバル資本市場を高台から見渡せる立場にあったスージー・シェア氏はこう振り返る。
同氏が目撃したのは、パンデミックに見舞われた商業の営みがきしみ音を立てながら停止するなかで、企業が何とか生きながらえようと資金の確保に奔走した姿だった。
多くの投資家がパニックに陥った。
新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の不確実性という冷え冷えとした霧のなかで市場が氷に覆われ、そのまま凍り付いてしまうに違いないと考えられていた。
凍結懸念から一転、煮えたぎるような熱狂へ
ところが、数週間後にはその氷が溶け始め、やがて熱を帯びるようになった。
経済版「核の冬」を是が非でも回避したい各国政府が金融・財政政策を総動員し、数兆ドルもの資金が供給されたためだ。
おかげでこの数カ月間、市場は凍るどころか湯がたぎったようになっている。
金融経済情報会社リフィニティブによれば、世界の非金融法人が今年に入って公募により調達した資金の合計は3兆6000億ドルと、目玉が飛び出そうな額に上る(図1参照)。
