(英エコノミスト誌 2020年12月12日号)

中国は全世界で未来の指導者に影響を及ぼそうとしている。
中国の習近平国家主席は12月の初め、共産党が自らに課した締め切りを守ったと胸を張った。
極度の貧困(1日当たりの収入が1ドルを少し上回る水準と定義される)を中国から排除したというのだ。
当然ながら、共産党は極貧との戦いに勝利したことを他国に伝えたがっている。
10月には貧困撲滅についてのほぼバーチャルなセミナーを2日にわたって開催し、100を超える国々から400人近い参加者を集めた。中国国営メディアでは、中国の進歩をほめちぎる参加者のコメントが引用された。
しかし、この集まりは生活に困窮する人々を救うことだけが目的ではなかった。中国の政治モデルを誇示することも、狙いの一つだったのだ。
戦狼外交とは別の顔
西側諸国ではこのところ、中国の外交についての報道と言えば、同国がいかに攻撃的になったかという話が大半を占める。
中国の外交官のなかには、外国の批判にしばしばかみつくことから、感情的愛国主義の中国映画のタイトルにちなんで「戦狼」というあだ名をつけられた人もいる。
対照的に、中国の政府当局者は、西側諸国以外の国々に対してはもっとソフトな口調で話す。中国を豊かにしている統治方法、他国の助けにもなりうると信じている統治方法の良さを説いているのだ。
多党制の民主主義国のなかからも、このメッセージを歓迎するところが出てきている。
ケニアの与党・ジュビリー党のラファエル・トゥジュ事務局長は、前述の貧困緩和についてのフォーラムで、自分の党も中国共産党をお手本にしなければならないと語ったと報じられた。
習氏は2017年、中国の発展モデルは他国に「新たな選択肢」を提供したとか、「中国的方法」は人類の問題の解決に寄与し得るなどと示唆して西側諸国で話題になった。
習氏はその後、「中国モデル」を輸出する計画はないと強調したものの、実際には政府当局者がまさにその輸出を実行している。