(英フィナンシャル・タイムズ紙 2020年12月8日号)

ブレグジットも大きな問題だが、ポーランドおよびハンガリーとの対立もEUにとって頭痛の種だ

 12月10~11日に開かれる欧州連合(EU)首脳会議で提案されている議題は、秩序だった世界の姿を描写している。

 新型コロナウイルス、気候変動、米国の大統領選挙について、心を落ち着かせるような言葉が並んでいる。

 議題から外されているのは、会議室の外でドタドタと暴れ回る2匹のゾウだ。

 一つはブレグジット(英国のEU離脱)、もう一つは法の支配をめぐるポーランド、ハンガリーとの対立だ。

 だが、現実は何かと言えば、もし妥協点が近々見つからなければ、EUはまもなく二重の「ノーディール(合意なし)」と向き合うことになる。

 相手は英国と、ポーランドおよびハンガリーだ。

長期的な未来のためにノーディールも辞さず

 これはブレグジットの移行期間が終わる来年1月1日に英国との通商関係が絶たれることを意味し、貿易に関税障壁が設けられ、国境で大型トラックが長蛇の列を作るようになり、漁船団同士が衝突する可能性もある。

 一方、ポーランド、ハンガリーと合意がまとまらなかった場合に何が起きるかと言えば、EUが数十年ぶりに予算について合意できず、資金の流れが滞るほか、ポーランド、ハンガリー両政府とのにらみ合いになり、最終的にはEUを離脱する国がさらに2カ国出ることさえ考えられる。

 良識があれば、このような結果を喜んで受け入れるEU首脳は一人もいないだろう。では、なぜEU首脳は今、このリスクを取る用意があるのか。

 ロンドン、ワルシャワ、ブダペストで好まれているストーリーは、欧州の傲慢な官僚がフランスにけしかけられ、この主権国家3カ国にあれこれ指図しようとしている、というものだ。

 実際には、EU内にダブル「ノーディール」を望んでいる人はいない。だが、欧州の交渉担当者は、2つの悪いディールをまとめる方が、EUの長期的な未来にとってはるかに悪いことを知っているのだ。