連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第29回。「若い世代こそ後遺症が怖い」──新型コロナウイルス感染症の後遺症外来で多数の患者を診てきた平畑光一・ヒラハタクリニック院長に、讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)が“軽症者の後遺症の実態”を聞いた。(ヒューモニー)

 12月3日、厚生労働省に新型コロナウイルス感染症の対策を助言する専門家組織は、「入院、重症患者の増加が続き、医療体制へ重大な影響が生じるおそれがある」として最大限の警戒が必要だとしました。あわせて、20~50代の比較的若い世代が感染を広げているという分析結果も報告されました。若い世代は、感染しても比較的軽症であることが多いため、「やや緩んでいる」という見方もあります。

 しかし、「後遺症に苦しんでいるのは若い世代に多い」と警鐘を鳴らす医師がいます。通常の診療に加えて今春から新型コロナ後遺症外来を始められた平畑光一・ヒラハタクリニック院長です。

 私自身は、勤務する自治医科大学附属さいたま医療センターで重症患者の治療にあたり、その後遺症を診てきましたが、軽症患者の後遺症についてはつぶさに診ることはできません。そこで今回は、平畑先生にぜひ軽症患者の後遺症の実態を伺いたいと思い、東京・渋谷のヒラハタクリニックを訪ねました。

確定診断がつかずに後遺症が出ている患者も

讃井 平畑先生はおそらく日本で一番、新型コロナ感染症の後遺症を訴える患者さん(以下後遺症患者)を診ていると思います。後遺症患者を診るようになった経緯から教えてください。

平畑光一(ひらはた・こういち)
2002年、山形大学医学部卒業。東邦大学医療センター大橋病院消化器内科などを経て、現在、医療法人創友会ヒラハタクリニック院長。旧通産省第一種情報処理技術者。医療用AIの開発などにも携わる。

平畑 3月に、当院にかかっていた2人の患者さんに謎の症状が出現したんです。私の専門は消化器内科で、2人のうちの1人はそれまで高脂血症(血液中の中性脂肪値が基準より高い状態)の治療をしていた患者さんでした。それ以外に持病のない若い男性です。その患者さんが突然、食べられなくなったり、微熱が続いたり、だるくなったりし始めたんです。当初は、「ちょっと風邪をひいたかな」程度だったので、私も新型コロナ感染症だとは認識していませんでした。でも、謎の症状はいっこうに良くなりません。そこで、いろいろ調べていくうちに、新型コロナ感染症の後遺症なのではないかという結論にいたりました