昨年12月24日、ジャカルタのカテドラル教会で行われたミサの様子(写真:Abaca/アフロ)

 インドネシアのカトリック、プロテスタントなどのキリスト教徒にとってまた複雑な季節がやってくる。重要な宗教行事であるクリスマスイブとクリスマスである。

 世界第4位の約2億7000万人の総人口の約88%を占めるイスラム教徒にとって、クリスマスは言ってみれば「異教徒のお祭り」。クリスマスは4月12日のイースター、5月31日の精霊降臨祭(ペンテコステ)とともに、キリスト教徒にとっては遠慮しながら、気兼ねしながらの祝祭となるのがインドネシアの実情である。

 日本ほどではないにしても、インドネシアでも若者の間では宗教に関係なく近年祝うようになった2月14日の「バレンタインデー」にしても、保守的なイスラム教団体やイスラム教指導者さらにイスラム教学校からは「バレンタインデーはキリスト教徒の習慣であり、イスラム教徒が祝うべきものではない」と真面目に「禁止・自粛令」をだすお国柄である。そのため今年のクリスマスも、キリスト教徒にとっては「周囲のイスラム教徒に配慮して静かに祝う」日になりそうだ。

キリスト教徒4人虐殺の衝撃

 というのも11月27日に、「キリスト教徒4人が虐殺される」という悲惨なニュースがインドネシア全土を揺るがしているからだ。これはスラウェシ島中部スラウェシ州シギ県の山中にあるキリスト教徒が多く住む集落が、約10人の正体不明の武装集団に襲撃され、キリスト教徒の住民4人が殺害、住居などが放火、焼失したのだ。

 この事件が大きな注目を浴びているのは(1)犯行グループは同州に拠点を置く「東インドネシアのムジャヒディン(MIT)」というイスラム系テロ組織によるものであること、(2)被害者全員が救世軍教会に所属するプロテスタントのキリスト教徒であること、(3)キリスト教の施設として利用されていた家屋が放火されたこと、(4)4人のうち2人は焼死体で発見され、残る2人は斬首されていたこと、などによる。