短期集連載「コスパで測るコロナ下の学校教育と大学受験」の第3回。「厳格すぎる入試はコスパが悪い」「奨学金や学費無償化は“社会のコスパ”の視点で仕組みを考えるべき」──教育経済学の第一人者・赤林英夫氏(慶應義塾大学経済学部教授)が、日本が目指すべき大学の姿を掘り下げる。(ヒューモニー)

 前回、「学費無償化で投下した税金を無駄にしないためには、大学入試のあり方や大学の教育課程を戦略的に見直す必要がある」と述べました。では、どのように見直すべきか考えてみたいと思います。

厳格すぎる筆記試験は大学を疲弊させる

 コロナウイルス危機という「外圧」により、今後、大学入試において「厳格な筆記試験」を中心に据え続けるのはますます難しくなっています。実際、事実上の二次試験の中止を発表した横浜国立大学を始め、多くの大学が、筆記試験の縮小・中止を発表しています。新しい共通試験もどこまで予定通り実施できるか予測がつきません。

(参考)「106大学、入試方法変更へ コロナ影響、実技中止も 朝日新聞・河合塾共同調査」(朝日新聞2020/9/10)

(参考)「都市封鎖まで想定 コロナ対応で入試のシミュレーションを重ねる各大学」(毎日新聞2020/11/28)

 従来、大学入試は、本人の努力や能力が正確に反映されるべき、評価は厳格かつ公平であるべき、ということが言われてきました。そのため、学校からの評価書や面接よりも筆記試験が重視され、出題にミスがあると大学はお詫びをし、社会的制裁を受け、結果、大学はさらに出題内容のチェックに人と時間を使うことになります。

 しかし、大学教員は入試問題作成のプロではありません。大学での研究とは、答えが見つからないかもしれない課題に挑戦することだからです。設問を易しすぎず難しすぎず作成し、過去問との重複がないか、出題ミスがないかチェックすることなど、大学教育の本質とは大きく外れており、高校や予備校に勝てるはずはありません。