青森県の三沢基地に配備されている米軍の電子線機「EA-18G」(2020年11月20日撮影、米海軍のサイトより)

 最近、「尖閣有事の際に、米国は日本を助けに来ない」という主旨の報道が見受けられる。

 筆者は、これは中国のプロパガンダが効果を上げている証左であろうと見ている。

 プロパガンダ(宣伝工作)とは、「直接または間接に発信者を利するために、受信者(個人・集団)の考え方や感情、態度、行動などに影響を与えることを目的とした情報発信である」と定義できる。

 プロパガンダは、通常は意図的に実行されるが、時には無意識で実行された行為が思わぬ人々に大きな影響を及ぼすことがある。

(プロパガンダの詳細については拙稿「日本にかけている宣伝工作の絶大な効力」https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52103を参照されたい)

 以下、初めに中国のプロパガンダと思われる事例について述べ、次に中国のプロパガンダの目的とその手法について述べ、最後に中国のプロパガンダに惑わされないために必要なコモンセンスについて述べる。

 本稿が、我が国のプロパガンダ対策の整備にわずかでも貢献できれば幸甚である。

1.中国のプロパガンダと思われる事例

 2020年5月19日、米国のシンクタンクである「戦略予算評価センター(CSBA)」のシニアフェローであるトシ・ヨシハラ(Toshi Yoshihara)氏は、「Dragon Against the Sun」(筆者訳:日本に敵意を向ける中国)というタイトルのリポートを発表した。

 その中で、中国が4日以内に尖閣諸島を奪取するという“中国人が作成した”シナリオが紹介されている。

 シナリオは8つのフェーズで構成されているが、第5フェーズで「米国は安全保障条約の発動を拒否した。ワシントンはこの紛争を死活的利益でないと見ている」といった衝撃的な内容が記載されている。同シナリオの要約は次のとおりである。