(英エコノミスト誌 2020年11月21日号)

台湾の若い起業家は中国への熱が失われているように見える(写真は台北の國立中正紀念堂)

中国経済発展に寄与したビジネス関係が新たな課題に直面している。

 先日の朝、工場の門の外に何百人もの人々が仕事を求めて行列を作った。

 サムスンや東芝といったブランドに電子部品を供給している台湾メーカー、厚声電子工業(ユニロイヤル・エレクトロニクス)が、中国・上海から車で西に1時間ほどのところにある崑山(クンシャン)の工場で人手を増やそうとしていたのだ。

 新しい従業員の月給は4000元(610ドル)。この地域の最低賃金の2倍だ。

 崑山にはユニロイヤルのような台湾メーカーの事業所が何百も点在しており、ここに住む台湾人は10万人を超えている。

リトル台北に異変

「リトル台北」として知られる崑山からは、もっと大きな現象が垣間見える。

 推計値には幅があるものの、現在では120万人もの台湾人(台湾の人口の5%相当)が中国本土に住んでいると考えられている。その多くはビジネスマンだ。

「台湾株式会社」は、台湾を自国の領土の一部と見なす中国との緊張した政治的関係がビジネスの場に入り込まないようにしてきた。台湾企業がここ30年間で中国での事業に投じた資金は計1900億ドルに上る。

 アップルをはじめとする電子機器メーカーから製品の組み立てを請け負う台湾の大手企業、鴻海精密工業(フォックスコン)は、中国でどの民間企業よりも多い100万人もの従業員を雇用している。

 西側諸国が共産主義の中国の台頭にますます疑念を強めていくなか――米国のジョー・バイデン次期大統領はこのトレンドを減速させるかもしれないが、反転はさせないだろう――、中国政府は、台湾海峡をまたぐ商業的つながりをこれまで以上に強化したがっているように見える。

 中国にとって、台湾企業は投資してくれる主体であり、米国政府が中国向けの輸出を減らそうとしている半導体など重要な技術の供給元でもあるからだ。

 ただそれと同時に、対岸の巨人に対する台湾の熱意は冷めつつある。その理由は地政学だけではない。