「伝統工芸を伝える店の看板とパンフレットを作る」というプロジェクトを実施した若狭の伝統工芸職人たち。福井県の「ふるさと納税型クラウドファンディング」で無事資金を調達した

 町おこしのイベント開催、自然保護活動、新たな商品開発などでクラウドファンディングを利用する例が増えている。だが、数千円、数万円という単位の寄付をいかに個人にしてもらうかが大きな課題だ。

 そのような寄付する人の心理的負担を下げ、寄付を集めやすくする画期的な仕組みが「ふるさと納税型クラウドファンディング」だ。寄付者、プロジェクト実行者、寄付先自治体のどれもがメリットがある、“三方よし”の仕組みだ。これを上手に使っている福井県と福井市の取り組みを紹介する。

“三方よし”になる仕組み

 最初に、「ふるさと納税型クラウドファンディング」の一般的な仕組みを説明しておこう。

 寄付者は、通常のクラウドファンディングと同様、一つのプロジェクトを選んで寄付(支援)を行う。その後確定申告などを行うと、寄付額とほぼ同額が住民税などから減額(控除)される(厳密にはそうならないこともあるが、説明が複雑になるので省略する)ので、結果的には金銭の負担がほぼない形でプロジェクトを支援したことになる。

 寄付金(支援金)が目標額を上回ってプロジェクトが成立すると、集まった寄付金が(クラウドファンディングサイトが手数料を引いたうえで)寄付先自治体に支払われる。自治体はそれを原資として、奨励金、補助金などの名目でプロジェクト実行者に支払う。自治体は自前の予算をあまり使わずに、地域活性化への金銭的支援を行える。予算措置が必要な通常の奨励金、補助金よりも、条件や制約を少なくすることができるので、支援対象を広げることもできる。

 プロジェクト実行者は、通常のクラウドファンディングと同様な形で寄付金(支援金)を受け取れる。寄付先自治体などがプロジェクトの広報活動をしてくれる点が、有効に働く場合もある。