犬型のロボットを連れてパトロールする米空軍の兵士(2020年9月、米空軍のサイトより)

 各国におけるAI開発に向けた競争は熾烈になっている。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は「AIを制する者が世界を制する」とまで発言している。

 このような状況で、トップを走るのは米国だが、中国も国家を挙げてAIの開発に邁進し、着実に成果を上げている。

 その背景には、習近平主席が宣言した「2030にAI世界一を目指す」という野望がある。

 中国で注目されるのは、AIを軍事のあらゆる分野に応用して、「AIによる軍事革命」を実現しようとしている点だ。

 筆者は「自衛隊は中国人民解放軍に敗北する!?」(扶桑社新書)を上梓した。その中で、AIの軍事利用の優劣が将来戦の趨勢を決定すると指摘した。

 そして、この分野で米軍や人民解放軍に大幅に出遅れている自衛隊に奮起を促した。

AIの軍事利用分野

 AIの軍事利用が世界的な潮流になっている。軍隊のすべての業務は、AIにより業務の効率化・省人化などの効果が期待できる。

 AIの有事における軍事適用については、米軍がこの分野でトップを走っているが、中国人民解放軍も米軍に肉薄している。

 中国は、①AIを将来の最優先技術と位置づけ、「2030年までにAIで世界をリードする」と宣言し、②習近平主席が重視する「軍民融合」(軍と民の技術の融合)により、民間のAI技術を軍事利用して「AI軍事革命」を目指し、③とくにAIと無人機システム(無人のロボットやドローンなど)の融合を重視し、これにより戦争の様相は激変すると信じている。

 一般的に、AIの軍事適用の分野は人事、情報、作戦・運用、兵站、衛生などの「あらゆる分野」であり、まとめると以下のようになる。