ワシントン近郊のバージニア州スターリングにあるトランプ・ナショナル・ゴルフ・クラブでゴルフカートを運転するトランプ大統領(2020年11月15日、写真:ロイター/アフロ)

(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家)

 米大統領選で民主党のバイデン候補が事実上勝利したというニュースが流れた際、ほっとした気持ちになった。

 トランプ大統領の下品な言動には辟易していたし、平気で嘘をつく姿には失望とやりきれなさを覚えるだけであった。イラン核合意やパリ協定からの離脱、WHO(世界保健機関)からの脱退など、アメリカ第一主義で世界のルールを壊すやり方にも我慢がならなかった。アメリカさえ良ければ、否、自分さえ良ければ世界はどうなっても良いというのがトランプ流だった。

 このトランプ流には、世界中が心身ともに疲れ果てたのではないか。

 米国内での分断も拡大した。経済格差は拡大し、警官による黒人暴行死を契機に、アメリカ社会の病理である人種差別への怒りも噴き出した。そして新型コロナウイルスである。当初、トランプ氏は「アメリカでは完全にコントロールされている」などと虚言を振りまいていた。信じたのはトランプ信者くらいのものだろう。よくわからないウイルスをコントロールできるわけがない。

 だが結果は、世界最多の感染者と死者を出し続けている。ワクチンや治療薬でも根拠ない楽観論を振りまいてきた。これによって多くの人々が仕事を失った。普通の国なら、この大失敗だけでも選挙に出馬することすらできなかっただろう。