(英エコノミスト誌 2020年11月14日号)

ファイザーが開発に成功した新型コロナウイルス感染症用のワクチン(写真:ロイター/アフロ)

科学者たちは新型コロナウイルスのワクチンを開発した。ただし、接種に伴う困難を過小評価してはならない。

 麻疹(はしか)ウイルスが1954年に分離されてから、そのワクチンが認可されるまでに9年の長い時間を要した。

 ポリオ(小児まひ)ワクチンでは、試験の開始から1955年に米国で初の認可が下りるまでに20年も持たされた。

 こうした事例に照らせば、新型コロナウイルス感染症「COVID-19」を引き起こすウイルス「SARS-CoV-2」に有効なワクチンを世界の科学者たちが1年足らずで作り出せそうなことは、まさに驚嘆に値する。

色めき立つ市場の強気派

 それも、ありきたりのワクチンではない。

 製薬大手の米ファイザーとドイツのバイオNテックが明らかにした最終段階の臨床試験の中間解析結果では、このワクチンの接種によって発症を免れる可能性は90%を超えると示唆されている。

 これは麻疹ワクチンのそれにほぼ匹敵し、インフルエンザワクチンの有効性(わずか40~60%)をはるかに上回る高率だ。真っ暗な冬に、希望の光が突然差してきた。

 当然ながら、ファイザーによる11月9日の発表に市場の強気派は色めき立った。

 投資家たちは、洗剤などの消費財を製造するクロロックス、在宅フィットネス事業を展開するペロトン、さらにはいくつかのハイテク企業など、コロナ禍から恩恵を受けてきた銘柄を投げ売りし、娯楽のディズニー、クルーズ客船運航のカーニバル、航空のインターナショナル・エアラインズ・グループ(ICAG)など、太陽が再び顔を出せば業績が改善する企業の株式に乗り換えた。

 主に裕福な国々が集うクラブ、経済協力開発機構(OECD)では、ワクチンが2021年の早い時期に導入されれば同年の世界の経済成長率は7%に達し、ワクチンの導入がない場合よりも2ポイント高くなると見ている。