中国・上海の道路(資料写真)

 中国政府が2035年までに新車販売のすべてを環境対応車にする方針であることが明らかとなった。中国市場では2035年時点で50%がEV(電気自動車)となり、残るガソリン車はすべてハイブリッド(HV)など環境対応車に限定される(つまり純粋なガソリン車は消滅する)。

 中国の決断は、トヨタなどHVを得意とする日本メーカーには追い風とされるが、この状況でHVにリソースを集中する戦略はリスクが高い。市場の本質を十分に考えた上での選択であれば問題ないが、目先の利益を優先し、なし崩し的にHVを選択するのは避けた方がよいだろう。この問題について企業戦略の原理原則から考察する。(加谷 珪一:経済評論家)

米欧中が揃って脱石油にシフト

 中国の習近平国家主席は2020年9月、2060年までに温室効果ガスを実質ゼロにするという方針を明らかにした。中国は新興工業国であり、先進各国と比較すると、どうしても温室効果ガスの排出量が多くなってしまう。

 先進各国は2050年までに温室効果ガスゼロを目標としており、取り組みが遅れていた日本も、菅首相が所信表明演説において2050年までの排出量ゼロを表明した。中国が設定した目標は各国より10年遅いとはいえ、中国の国情を考えると、かなり思い切った目標設定といってよい。

 中国がこの目標を達成するには、相当な努力を必要とするが、その中核となる施策がガソリン車の全廃である。中国政府は正式には発表していないが、2035年までに新車販売のすべてを環境対応車に切り換えると方針と言われている。

 欧州では英国がガソリン車の販売を2035年に、フランスでは2040年に禁止する方針を掲げている。米国はトランプ政権が脱石油に否定的だったことから、ガソリン車の販売禁止を表明しているのはカリフォルニア州など一部にとどまっていたが、バイデン新政権が再生可能エネに舵を切る方針を明確に示したことで状況が変わった。米国と欧州の足並みが揃ったことで、一気に脱石油が進む可能性が高まったと見てよいだろう。