バイデン政権で米国の環境政策は大きく変わるとみられている(写真:ロイター/アフロ)

 米大統領選では、民主党のバイデン候補の勝利が確実になった。トランプ政権の4年間、米国はパリ協定から離脱するなど気候変動の国際的な枠組みからは距離を置いていたが、バイデン政権になると、環境政策は大きく変わることが予想される。バイデン政権の誕生で環境政策やエネルギー政策はどう変わるのか。気候変動リスクを描いた『データでわかる 2030年 地球のすがた 』の著者で、気候変動やESG投資に詳しいニューラルの夫馬賢治CEOが解説する。

新政権「骨太の経済政策」は気候変動対策

 米国で11月3日に実施された大統領選挙。史上稀に見る大接戦の中で、民主党のジョー・バイデン候補が複数の激戦州を辛うじて制し、共和党政権から民主党政権に政権シフトが起こることが極めて濃厚となった。

 さらに立法府である連邦議会でも、下院選でも民主党が多数党を維持。上院選でも民主党と共和党の議席数ほぼ同数するとなる見通しで、順当に行けば、新政権が始まる2021年1月20日からは、現トランプ政権から政策が大きく転換される可能性が非常に高くなった。

 政権の大きな鍵を握るのは経済政策だ。新型コロナ禍により、経済政策はかつて以上に政権支持率や人々の生活を左右する状況にある。そして、世界一の国内総生産(GDP)を誇り、輸入額世界1位、輸出額世界2位、さらには世界の金融市場の約半分を形成する米国での経済政策は、当然世界中に影響を与えることになる。

 バイデン候補は、今回の大統領選挙の中で膨大な量の公約を宣言しており、それを通して2021年以降の米政権の主要政策を占うことができる。では、バイデン政権の経済政策はどのようなものになるだろうか。

 公約の中で掲げられていたのは、次の5つ。

(1) 製造業での中小企業支援による経済復興

(2) 気候変動対策のための巨額のインフラ投資

(3) ワーキングマザーの負荷削減のための教育・福祉の充実

(4) 人種マイノリティへの助成金や低価格住宅の建設

(5) これらの政策財源を確保するための企業・富裕層への増税

 このようにバイデンの政策は、政府が積極的に公共投資を増やす典型的な「大きな政府」だ。中でも、とりわけ財政出動の規模まで含めて発表しているのが(2)気候変動対策のための巨額のインフラ投資で、経済対策規模は2兆ドル(約210兆円)というものすごい額となっている。シンプルに言えば、増税して、気候変動対策に大規模な歳出を行う財政政策が、バイデン政権の「骨太の経済政策」と言える。では、これが、どのように日本の産業に影響を与えるのだろうか。