(英フィナンシャル・タイムズ紙 2020年11月6日付)

すっかり傷ついたリベラル派は、ジョー・バイデン前副大統領が米国大統領選の歴史上、誰よりも多くの票を獲得したことによって、一時的に心が晴れるかもしれない。
ただし、それもドナルド・トランプ大統領の得票数が史上2位につけたことを知るまでの話だ。
トランプ氏は実際、バラク・オバマ大統領が2008年に記録した最大得票数をも上回った。
11月3日の選挙の記録的な投票率となお続く票集計から得られる本当の教訓は、米国は激しく、エネルギッシュに割れ、かつほぼ均等に分断された国だということだ。
厳しい船出
「バイデン大統領」はせいぜい、曖昧な負託しか得られない。問題は、それで何ができるか、だ。
民主党の大統領候補では最たる穏健派だったバイデン氏が望んだことよりもはるかに少ない、というのがその答えだ。
番狂わせがない限り、共和党が議会上院の過半数を維持する。
バイデン氏は、医療保険制度への「パブリックオプション」の追加や環境技術への大型投資、中産階級の大学生の学費無償化といった政策課題を少しずつ可決させることができたら御の字だろう。
投票が終わった3日夜は、米国のプログレッシブ(進歩派)が抱いてきたエポックメーキングな変化への夢を打ち砕いた。また、主要な激戦州では、まだ票の集計が続いている。
バイデン氏が、上院のフィリバスター(議事妨害)を廃止したり、プエルトリコやコロンビア特別区(ワシントンDC)などを米国の新たな州に加えたり、最高裁判所の規模を拡大したりできる見込みは消えた。