(英エコノミスト誌 2020年10月31日号)

英国の気前良すぎる雇用維持政策が将来に禍根を残す危険性がある

英政府はコロナ対策の雇用維持制度を延長すべきではなかった。

 英国政府が国内のあらゆる雇用を守ると20年前に誓っていたら、今頃どんな事態になっているか想像してみてほしい。

 恐らく、目抜き通りの旅行代理店で働く人の数は今よりも3万人多い。ファクス機の修理で生計を立てる人も3万人程度いるだろう。

 また、2009年に経営破綻した小売りチェーンのウールワースでは、まだ4万人が商品を棚に補充したりレジを打ったりしているはずだ。

 陳腐化した仕事は消滅させ、新しい仕事が花開くようにする――これこそ、資本主義経済が豊かになったり生産性を高めたりする主要な方法の一つだ。

 この創造的破壊のプロセスに介入するなら、政府は危険を覚悟することになる。

 英国政府がパンデミックの経済への悪影響を緩和すべく打ち出した政策の方向性が、著しい誤りであるのはそのためだ。

他国より気前の良い雇用維持制度

 英国は今年3月以降、主に雇用維持制度を通じて、労働者とその家族をパンデミックの破壊的な影響から守っている。

 これは自宅待機中の労働者に給与の80%相当額を給付する仕組みで、アプローチ自体は他の欧州諸国で導入されたものと同様だが、他国よりも気前が良い。

 ロックダウン(都市封鎖)が最も厳しく行われた時期には、労働力人口の3分の1に相当する1000万人近い労働者が受給していた。

 英国では今でもイタリア、ドイツ、フランスなどの2倍を超える労働者が自宅待機を余儀なくされている。

 リシ・スナク財務相はつい最近まで、この雇用維持制度に代えて必要最低限の支援に絞り込んだ制度を導入する計画だった。