(英エコノミスト誌 2020年10月24日号)

言論の自由をどう扱うかは、一握りのハイテク企業幹部に任せきりではいけない重大事だ。
反トラスト法(独占禁止法)の訴訟としては、これは20年ぶりの大型訴訟だ。
米司法省は10月20日、ハイテク大手グーグルが携帯電話端末メーカーやネットワーク事業者、ブラウザー提供事業者などと手を結び、自社の検索エンジンがデフォルト(初期設定)で使用されるようにした疑いがあるとして提訴に踏み切った。
この取引によって消費者はほかの検索エンジンの利用を妨げられ、不利益を被っていると司法省は主張する。
この取引はオンライン検索におけるグーグルの支配的な地位によって維持されているとしている。
同社のオンライン検索の世界市場シェアがざっと90%にのぼることから、この取引の費用をまかなう広告収入が得られている、というわけだ。
司法省は、どのような救済措置を望むかをまだ明らかにしていないが、グーグルとその親会社アルファベットに対し、ビジネスの構造を変えさせる可能性がある。
といっても、固唾をのんで見守る必要はない。グーグルは今回の提訴をナンセンスだと一蹴しており、裁判は何年も続くかもしれない。
大型ハリケーンのように渦巻く怒り
グーグルの提訴は、フェイスブックやツイッター、そしてソーシャルメディア全体に迫りつつある嵐とはかなり差があるように見えるかもしれない。
確かに、前者で問題になっているのは企業間のある種の契約だけだが、後者では、ハイテク企業が社会を破壊しているのではないかとの疑念が持ち上がり、一般の人々がカテゴリー5のハリケーンのような激しい怒りを説明責任のない企業にぶつけている。
例えば左派は、Qアノンの陰謀論から白人至上主義者の扇動に至るまで、ソーシャルメディアは利用者を憎悪と虚偽にどっぷり浸からせていると息巻いている。
そして右派は、ハイテク企業が検閲を行っていると非難している。
民主党大統領候補ジョー・バイデン氏の家族が汚職に手を染めたとする真偽の疑わしい新聞記事が先日、一部のソーシャルメディアで表示されなかった一件も、そうした検閲だという。