驚異的なヒットとなっている映画『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』(写真:西村尚己/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 アニメに興味のない大人でも、『鬼滅の刃』というタイトルなら知っているはずだ。

 先々週の16日に公開された新作映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は、週末の3日間で興行収入が46億円を超え、観客動員が342万人でいずれも過去最高を記録。このコロナ禍にもかかわらず、驚きを持って報じられている。

ひと言で言えば「鬼退治」ストーリーなのだが・・・

 集英社の『週刊少年ジャンプ』に連載された漫画が原作で、昨年アニメがテレビ放送されて人気を呼んだ。連載は今年の5月で完結しているが、コミックスは現在22巻までの段階で累計発行部数が1億部を超え、12月には23巻の発売が予定されている。公開された映画は、テレビ放送の続編だ。

 私もアニメは嫌いではない。というより、私が傍聴取材した一連のオウム裁判の法廷の様子やエピソードを絵に描き“アニメ”にしたドキュメンタリー番組をいくつか制作している。同じ手法でいわゆる「陸山会事件」で強制起訴された小沢一郎の法廷の様子もアニメ化した。いずれもフジテレビのノンフィクション番組枠で放送された。因みに『鬼滅の刃』も新作映画公開に先立ち、同局でまとめて放送された。お粗末ながら、私もアニメの制作者の端くれだ。『鬼滅の刃』もテレビ放送されたものをすべて観た。確かに面白い。

 それにしても、なぜ、ここまで人気を集めるのか。コロナ禍での自粛生活でファンが増大し、ストレスといっしょに一気に噴出した、と語る人もいるが、それ以前から人気だった。先日、立ち寄ったドラッグストアでは、店内にこの主題歌が流れると、母親に連れられた子どもが一緒になって歌っていた。これまで『宇宙戦艦ヤマト』『機動戦士ガンダム』など、ブームとなったアニメはいくつかあるが、それとはまた様相が異なる。

 そこで私なりに、この人気アニメを分析してみる。そこには設定の単純明解さに、既存の人気アニメの様々な要素をくっつけたところに特色を見出せる。