(英フィナンシャル・タイムズ紙 2020年10月17・18日付)

新型コロナウイルス感染症を乗り越えられても、英国にはブレグジットというもう一つ乗り越えなければならない高い壁がある

 英国と欧州連合(EU)の通商交渉がクライマックスに近づいている今、英国人はブレグジット(英国のEU離脱)について何を考えているのだろうか。

 筆者は、6月と7月に動画会議システム「ズーム」を介して(WiFiがちゃんと接続できている時に)ブレグジットについて議論したフォーカス・グループの様子をいくつか傍聴し、さらにそれらを文字起こしした原稿数百ページに目を通した。

 これらのフォーカス・グループのとりまとめを行ったのは、ロンドン大学キングス・カレッジを本拠地とする研究グループ「変わりゆく欧州における英国(UK in a Changing Europe)」と、独立系の社会研究機関「全国社会調査センター(NatCen)」だ。

 グループの参加者が中高所得者だったのは、国民投票の有権者のなかで最も大きな集団だった「(経済的に)ゆとりのある離脱派」を理解することがこのプロジェクトの狙いだったためだ。

 今回のフォーカス・グループは、基本的に、離脱派と残留派を分けて編成された。率直な対話を促すためだ。

 またこれとは別の非政府組織(NGO)が、独自にとりまとめたフォーカス・グループの文字起こし原稿を筆者に提供してくれた。

 これらを通して筆者がたどり着いた結論は、大半の英国人は不安を感じているものの、ブレグジットの衝撃を恐らくいまだに過小評価している、というものだ。

米国ほどひどくない国の分断

 新型コロナウイルスのパンデミックのせいで、英国人はブレグジットのことをあまり気にとめなくなっている。

 専門的で気が滅入る通商交渉をフォローしている人はほとんどいない。

 残留派も離脱派も、取り組みたいのは自分の親族との対立の収拾だ。ブレグジットについては大抵、自分と正反対の考えの人が親戚にいるからだ。

 この分断は、米国における共和党支持者と民主党支持者の対立に比べれば弱いことが分かっている。