(英フィナンシャル・タイムズ紙 2020年10月16日付)

選挙戦が終盤を迎え、ドナルド・トランプ大統領の演説が過激度を増しているのは、終わりを認識し始めたからだろうか

 あえて認める人はほとんどいないが、米国の大部分はドナルド・トランプ氏の終わりを祝う準備をしている。

 11月の米大統領選挙でトランプ氏が敗北すれば、多くの人が近代の米国史上最悪と見なしている政権が幕を下ろすだけではない。

 彼らの考えでは、大統領の支持基盤を構成している、「Make America Great Again(MAGA、米国を再び偉大に)」帽子をかぶり、民兵組織を支持する嘆かわしい連中を一掃することにもなる。

バイデン陣営のリードは鮮明だが・・・

 それはトランプ氏のみならず、「トランピズム」(トランプ大統領の政治思想や統治スタイル)も例外として葬り去られる贖罪の瞬間になる。

 いわれのない地獄を4年間経験した後、米国はトランプ以前の段階から出直せる、というわけだ。

 これは自然な反応だろう。だが、大間違いでもある。

 トランプ氏が来月負けるとすれば、投票する見込みの有権者の最大45%の支持を得て負けたことになる。人数にして、ざっと6000万~7000万人の支持だ。

 民主党候補のジョー・バイデン前副大統領が世論調査でリードを固め、支持率の差が2ケタまで広がっているにせよ、トランプ勝利の可能性はまだ軽く見てはならない。

 たとえ負けるとしても、1984年に民主党のウォルター・モンデールが共和党のロナルド・レーガンを相手に大敗を喫した時や、1964年に共和党のバリー・ゴールドウォーターが民主党のリンドン・ジョンソンに大敗した時に匹敵するような圧倒的な拒絶にはならない。

 そのような大差になるには、今の米国は激しく分裂しすぎている。