予想されていたことではあったが、コロナ危機による賃金の下落が鮮明になっている。日本の場合、雇用維持が最優先されるので、1人あたりの労働時間と賃金を減らして社員数を維持し、総人件費を減らす方向に進む可能性が高い。日本は事実上のワークシェアリング時代に突入したと考えることもできる。(加谷 珪一:経済評論家)

政府の支援策が功を奏した

 厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、2020年8月の現金給与総額は前年同月比1.3%のマイナスとなった。運輸や飲食など、コロナが直撃した業界の下げ幅が大きいが、製造業などの下落も大きく、あらゆる業種に影響が及んでいることをうかがわせる。

 労働時間についても前年同月比マイナス5.0%となっており、労働時間が大きく減ったことが分かる。コロナ不況によって残業が減り、その分だけ収入もダウンしたと見てよいだろう。残業は本来、イレギュラーなものだが、日本の場合、残業代込みで年収を算定しているという側面があり、残業の抑制は即、生活水準の低下につながる。

 賃金が前年同月比でマイナスになるのは5カ月連続となっており、コロナ危機以降、賃金は下がりっぱなしというのが現実である。では、今後の賃金はどのように推移するだろうか。残念だが、今の経済状況を考えると、来年(2021年)にかけて賃金が上昇に転じる可能性は限りなく低い

 調査会社の帝国データバンクによると、新型コロナウイルスの影響による倒産は、今年2月から10月までに600社を超えている。だが倒産の件数全体は前年比でむしろ減少している。その理由は持続化給付金や銀行による貸付け条件の変更など各種支援が効果を発揮したからである。