今季、10月15日時点で一軍昇格なしの斎藤佑樹投手(写真:AP/アフロ)

 明らかに「戦力外」の選手である。日本ハム・斎藤佑樹投手のことだ。

 今季はイースタンで1勝3敗、防御率7.54。お世辞にも、まともな成績とは言えない。このままファーム暮らしが続けば、2011年から始まったプロ生活で10年目にして初の一軍昇格なしでシーズンを終えることになる。

 低迷中のチームは逆転V、CS(クライマックスシリーズ)進出の望みが数字上で残っているとはいえほぼ消滅した格好だ。ただ今後の消化試合でも、斎藤の一軍昇格はあり得ないだろう。あえて厳しい言い方をさせてもらうが、今のレベルで右往左往する斎藤を一軍に上げれば、チームの面々から激しい反発を食らうことは必至だ。来季以降もチーム全体の士気に大きく影響を及ぼすことは間違いなく、そんな“自殺行為”は絶対に避けるべきである。

本人は「引退報道」を暗に否定

 そんな斎藤も、今オフは「引退」の二文字と向き合うことになる。一部週刊誌の報道でも今季限りで現役生活にピリオドを打つと報じられており、それが既定路線とみられている。

 もっとも斎藤本人は、周囲から彼の「スポークスマン」と揶揄されている一部メディアを通じて、暗に引退報道を否定する意思を示しているが、状況は厳しい。周囲の外堀は確実に埋められつつあり、実際に球団内でも斎藤への風当りはかなり強まっているようだ。

 ただ、斎藤が球団内でも事実上の特別扱いを受けている選手であることは間違いない。早稲田実業の野球部エースとして2006年の夏の甲子園では当時・駒大苫小牧の田中将大投手(現ニューヨーク・ヤンキース)と投げ合い“ハンカチ王子”の愛称をつけられ、一躍人気者になった。その後、早稲田大学に進学し、2010年のドラフトでは4球団競合の末に交渉権を獲得した日本ハムでプロ入り。入団後、日本ハムへもたらした“佑ちゃん効果”による収益は莫大な額に達していた模様で、一説には「入団当初の1~2年間は年間で十数億円レベルをコンスタントに生み出していた」ともいわれる。

 かつて首脳陣としてチームに従事していた球団有力OBは次のように言う。

「このような背景があることから球団は斎藤との契約を簡単に切れないと聞く。やはり『腐っても佑ちゃん』という神話が浸透しているということだろう。ただ、あくまでも話題性重視の“客寄せパンダ”。戦力としては、とうに限界を迎えている。2015年シーズンから数えれば、わずか2勝しかしておらず先発でも中継ぎでもシーズンを通して定着できていない。

 昨季、栗山監督からショートスターターという特異な役割を任され、周囲から『斎藤を無理やり一軍へ定着させるための起用法』とのうがった見方をされもしたが、そこまでしてもらっても斎藤は結果を残せなかった。他の選手ならば間違いなく戦力外だ。

 それでもズルズルと球団が契約を更新し続けているのは、“見えない力”が働いていると勘繰られても致し方ないでしょう。そういう観点から、つい最近まで、斎藤本人から『辞める』と言わない限り、球団はそのまま二軍で塩漬け状態にしながらズルズルと現役を続けさせていく方針であると見られていた」