働き方改革が叫ばれて久しいが、多くの企業では働き方改革といえば残業時間削減や有休取得などの労働時間を中心に考えることが多くなっている。そのためか、「定時で帰れ」などと強制される時短ハラスメントも聞かれる。

 このような働き方改革では従業員の働きがい向上につながっていないことも多いだろう。働き方改革のゆがみを抱えたままでは、企業成長も従業員の働きがいも共倒れになってしまうことが危惧される。

 このようなゆがみを解消するために、働き方改革の在り方を、EX(Employee eXperience)視点から再検討してみたい。よくある働き方改革の3つのジレンマに着目し、その解決の方法を考えていく。

〔ジレンマ 1〕働き方改革 vs 成長戦略

 多くの会社では、働き方改革は人事部門が担当し、成長戦略は経営企画部門が担当している。すると、相互の施策の関連性がないまま展開されるということが起こりがちになる。

 例えば、人事部門が残業時間削減を掲げる一方で、経営企画部門は今の人員のままで売上げをアップするという相反する施策を掲げてしまうわけである。そのため、現場では人的リソース(労働時間)を減らしながら、成長戦略の数値目標を達成するという、無謀ともいえる課題に取り組まなければならなくなる。これが1つ目のジレンマだ。

 これまでは残業などの「がんばり」で何とかしてきたが、今は限られた人的リソースのもとで目標を達成しなければならない。そのため、このジレンマを解消できずに、困り果ててしまうわけだ。こうなると、成長戦略を諦めて予算未達成の言い訳を考えたり、働き方改革への不信感が募ったり、文句を言うことに終始してしまう。

 では、こうしたジレンマをどのように解消していけばよいのだろうか。