(英フィナンシャル・タイムズ紙 2020年10月7日付)

もしトランプ政権が2期目に入ったら・・・。英国にとってそれは決して朗報とは言えない(写真はロンドンブリッジ)

 米国大統領の座がドナルド・トランプ氏の手中からすり抜けようとしている――。

 次第に強まるそんな感覚は、西欧諸国の大半の政府で静かな安堵をもって受け止められるだろう。だが、ロンドンだけは違うかもしれない。

 ボリス・ジョンソン首相率いる英政府は、欧州連合(EU)離脱の恩恵をはっきり示すことに懸命になっており、トランプ大統領は常に、ブレグジットを声高に支持してきた。

 また、EU離脱後の英国に素晴らしい貿易協定を与えることも約束した。

保守党右派が怒ったバイデン発言

 対照的に、民主党の大統領候補でアイルランド人の血を引くジョー・バイデン前副大統領は、もし英国が聖金曜日合意(ベルファスト合意)に違反すれば、米国との貿易協定はないと警告した。

 これは英与党・保守党の右派から、ショックと怒りで迎えられた発言だった。

 だが、ダウニング街(首相官邸)、あるいは保守党内にトランプ再選への静かな願望が潜んでいるにしても、それは英国の国益と次のトランプ政権の性質の双方についての甚だしい誤解に基づいている。

 米大統領と緊密に仕事をしたことがある人と話をすれば、トランプ氏が新型コロナウイルス感染症と戦って健康を取り戻し、ホワイトハウスに戻ったら、2期目のトランプ政権は外交政策で劇的に急進化し、英国に対してはるかに威嚇的になる、という警告の言葉を聞く。

 イランやイスラエル、中国、気候変動、国際刑事裁判所(ICC)、世界保健機関(WHO)といったデリケートな話題について、「紳士協定」への寛容がなくなる。

 逆に、英国を無理やり従わせるために、米国が持つありとあらゆる力が英政府に向けて行使されるだろう。