米国オハイオ州で遊説するジョー・バイデン候補(2020年10月12日、写真:ロイター/アフロ)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 中国は目前に迫った米国大統領選挙でトランプ大統領の再選を望むのか、それともバイデン前副大統領の当選を望むのか──。中国共産党政権がトランプ、バイデンどちらの当選を望むのかについて、中国側から錯綜した情報が発信され米国側を混乱させてきたが、ここへきてやはりバイデン氏の勝利を望むという本音が明らかになったようだ。

春頃は「トランプ再選が望ましい」

 米中両国が激突するなかでの米国大統領選は、中国問題が主要争点として比重を増し続けた。同時に中国当局が米国大統領選にどう反応するかも、当然のことながら国際的な関心の対象となった。中国では官民ともに大統領選への興味が非常に高いことがインターネット上の書き込みなどからも明白だった。

 では、中国当局はトランプ、バイデン両候補のどちらをより好ましい次期大統領とみなしているのか。この点について、中国当局としては、習近平政権に対して前例のない強硬措置をつぎつぎにとったトランプ大統領への反発が強く、やはり期待するのはバイデン候補の勝利だろうという観測が米国側でも一般的だった。

 ところが米国大統領選が本格化し始めた今年(2020年)春ごろから、「中国にとって本当に好ましいのはトランプ大統領なのだ」とする意外な評論が中国側から登場してきた。その代表は中国共産党の機関紙である人民日報系の新聞「環球時報」の記事だった。