(英エコノミスト誌 2020年10月10日号)

上海で開かれたフィンテックのコンファレンスでスピーチするアント・フィナンシャル・サービスグループのエリック・ジン会長兼CEO(2020年9月24日、写真:アフロ)

中国アント・グループの超大型株式上場は、フィンテックが金融にどのような革命をもたらしているかを示している。

 西暦1300年頃のこと。ベネチアの商人マルコ・ポーロが、中国で見聞きした驚くべきお金の話をヨーロッパ人に紹介し、かの国の皇帝は「木の皮を剥いで紙のようなものに加工し、カネとして国中に流通させている」と本に書いた。

 西洋もやがてこれを導入するに至ったが、それは中国で紙幣が発明されてから約6世紀後のことだった。

 最近になって中国を訪れた外国人旅行者は、お金が次の大きな一歩を踏み出した様子を見て驚き、強い興味を覚えつつ帰国している。

 紙幣が一掃され、スマートフォン上のピクセルに取って代わられているからだ。

サウジ・アラムコを抜き史上最大の上場に

 デジタルマネーの分野における中国の傑出ぶりは、フィンテック企業最大手のアント・グループが数週間後に香港と上海で行う巨大な株式上場によって知らしめられることになるだろう。

 調達金額は昨年のサウジ・アラムコのそれを上回り、史上最大の新規株式公開(IPO)になると見られている。

 ひとたび上場すれば、2004年創業の若い企業が、ルーツをたどれば1799年にまで遡れる世界最大の銀行JPモルガン・チェースと同程度の時価総額を手にする可能性もある。

 そしてアントの台頭はホワイトハウスのタカ派を不安にさせる一方で、世界の投資家を魅了している。

 金融システムというもののあり方が、中国だけでなく世界中で大きく変わる一つの前兆だからだ。