韓国の康京和・外交部長官(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 いま韓国で、昨年の「曺国事態」から始まった、文在寅(ムン・ジェイン)政権幹部の「道徳性議論」が、尹美香(ユン・ミヒャン)議員、秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官に続き、康京和(カン・ギョンファ)外交部長官にまで広がりを見せている。

空港で記者に直撃された外相の夫

 秋夕(旧暦の8月15日。今年は10月1日)連休が続いた10月3日、韓国の公営放送のKBSニュースは康長官の夫で延世大学名誉教授であるイ・イルビョン氏がヨット購入のために米ニューヨークに出発するという情報を入手し、仁川空港で直撃した。

記者 「アメリカに行かれるようですが、旅行の目的は何かお聞きできますでしょうか」

イ氏 「ただの旅行ですが。自由旅行」

記者 「自由旅行ですか? コロナの心配などはありませんか?」

イ氏 「とても心配です。だからマスクをたくさん持っていきますよ」

記者 「今、海外旅行を自粛するよう政府から注意報も出されている状況ですが」

イ氏 「コロナが一日や二日でなくなるわけではないでしょう? それなのに、毎日家でただじっとしているばかりではいけないから」

 このニュースが流れた直後、韓国ではイ氏の行動に対する非難が巻き起こった。海外旅行の自制を積極的に勧告してきた外交部トップの家族としてあまりに無責任だという指摘だ。これに対して、康京和長官は、「国民には申し訳ないが、止めることはできない」と弁解に追われた。

「私も説明したのですが、結局(夫)本人が決めて(旅行に)行ったのです。とにかく申し訳ありません」

「(夫は)ずっと前から計画を立てていて、何回も先延ばしにしてきました。帰国するように言うのも難しい状況です」

 韓国外交部の「特別旅行注意報」は強制ではなく、あくまでも勧告で、イ氏の海外出国自体は違法ではない。外交部長官である妻の権力を利用して特恵を受けたわけでもない。

 しかし、イ氏の行動や康長官の他人事のような態度に対して韓国国民が憤りを感じる理由は、文在寅政権関係者らの「ダブルスタンダード」があまりに度を越しているからだ。