(英エコノミスト誌 2020年10月3日号)

ベルリンにあるブランデンブルク門

ただ、東西ドイツ統一から30年を経て、自分のペースを見つけつつある。

 30年前なら、英国とフランスの外交官はつい気を抜いた瞬間に、分裂しているドイツと楽しくやっていけると小声で認めてしまうかもしれない。

 どれほど不当な話であろうと、ヘンリー・キッシンジャーの言葉を借りるなら、あの分裂は「欧州にとっては大きすぎ、世界にとっては小さすぎる」国の問題を封じ込めていたからだ。

 1989年にベルリンの壁が倒れた後、マーガレット・サッチャーは東西ドイツ統一を阻止するか、少なくとも遅らせる無益な謀(はかりごと)にフランス大統領のフランソワ・ミッテランを引き込もうとした。

 拡大したドイツは欧州の均衡を揺るがし、下手をすれば安全保障すら脅かすと危惧したためだ。

 当時の欧州の政治指導者のうち、統一ドイツを無条件に支持したのはスペインのフェリペ・ゴンサレス首相(当時)だけだった。

「歴史の終わり」で理想に向かったドイツ

 10月3日にドイツ統一30周年を迎えた今、欧州におけるドイツのパートナーの国々が抱いた不安は現実化していない。

 それどころか、次々にやってくる危機に引き裂かれてしまわないように欧州連合(EU)が奮闘するなかで、欧州諸国はドイツの強引さよりも腰の重さに手を焼くことの方が多かった。

 ドイツ政府高官のトーマス・バッガー氏は昨年公表した文章のなかで、再統一後のドイツはフランシス・フクヤマ氏による「歴史の終わり」説を単純かつ素朴に解釈して受け入れたと論じている。

 国益なるものが野蛮な過去の遺物となり、対外政策が多国籍機関に包摂されていく世界の実現にドイツは傾倒し、冷戦終結はその見方を裏づけているように見えた。

 ドイツの閣僚たちは、ドイツの利益と欧州の利益は同じであると示唆するようになった。