(英フィナンシャル・タイムズ電子版 2020年10月2日付)

人々はこれをドナルド・トランプ米大統領の「オクトーバーサプライズ」と呼んでいる。
だが、大半の側面において、新型コロナウイルス検査で出た大統領の陽性判定は、伝統的な選挙前の爆弾ニュースとは大きく異なる。
例えば2004年10月、ジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)が再選を目指す選挙の数日前に出てきたウサマ・ビンラディンの動画とは異なり、トランプ氏の不快な診断結果は必ずしも選挙戦での支援材料にならない。
陽性結果は、大統領がただでさえ低い評価を受けていたパンデミック対応に注目を集めることになる。
さらに言えば、トランプ氏が新型コロナウイルス感染症にかかったことは、サプライズには当たらないはずだ。
この数カ月、屋内での選挙集会や会合で何度も演説し、必ずと言っていいほどマスクを着けなかったトランプ氏は、部下の科学者の助言をあえて無視していた。
遅かれ早かれ、コロナウイルスに感染する可能性が高かった。
ホワイトハウスでのミニ・パンデミック
問題は、コロナ感染によって、すでに薄れつつあった再選の見通しが悪化するかどうか、だ。
投票日まであと32日しかなく、数百万の票がすでに郵送された段階になって、トランプ氏は少なくとも2週間は隔離状態で過ごさなければならない。
これは選挙集会がないこと、そして恐らくは10月15日に予定されていたジョー・バイデン前副大統領との2度目の候補者討論会もないことを意味している。
また、狭い部屋で働き、大抵の場合、職場でマスクを着けることでトランプ氏の不興を買いたくなかったホワイトハウスのスタッフの間にも劇的な波及効果があるかもしれない。