中国・北京で開催された「国慶節」祝賀会に出席した習近平国家主席(2020年9月30日、写真:ロイター/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 9月28日に習近平が召集した中央政治局会議で、今年(2020年)の中央委員会総会(五中全会)の開催日程が10月26~29日に決定した。この五中全会では、2021~26年の第14次五カ年計画と「2035年遠景重大目標」提案といった中国の短中期経済政策が決まるとされていることから、国内外で注目を集めている。

 だが、もう1つの注目点は人事だ。もし、この秋に習近平の後継者候補が見える人事、具体的には胡春華(現副首相、政治局員)と李強(現上海市書記、政治局員)が政治局常務委員会入りする人事があれば、習近平は2022年の第20回党大会で国家指導者の地位から引退して、権力を次世代に禅譲するつもりであることがわかる。この人事がなければ、2022年までの時間を考えると、後継者不在ということで、習近平は2022年以降も共産党中央と国家の最高指導者の地位に居座るつもりでいる、ということだろう。

習近平独裁に根拠を与える「条例」

 今年春の段階では、習近平は新型コロナ肺炎の隠蔽や、米中関係の悪化、中国経済の急減速の責任を党内で強く問われており、五中全会で後継者人事を認め2022年の党大会で引退することを了承した、といった予測が一時流れていた。だが、五中全会まであと1カ月の段階で、人事情報はほとんど流れていない。

 それどころか、9月28日の政治局会議で「中国共産党中央委員会工作条例」が審議されたと報じられており、この条例により習近平の党中央においての“核心的地位”が強化される、という見方が濃厚になっている。

 国営通信社、新華社の報道によれば、中央委員会工作条例は「習近平同志を核心とする党中央権威と集中統一指導の必然性への要求を固く守るもの」「中国の特色ある社会主義制度、国家統治システムと統治能力の現代化推進における重大な措置」であり、党中央の指導的地位、指導体制、指導者の職権、指導方法、決策の配置などに関して全面的な規定を定め、中央委員会の任務強化のための基本的なルールを提供するという。

 9月28日の政治局会議では、この条例について、“党規約と同等の党内法規”としての拘束力をもつことを要求しており、「4つの意識」(2016年に習近平が提唱した政治意識、大局意識、核心意識、看斉意識)、「4つの自信」(中国の特色ある社会主義の道への自信、理論的自信、制度的自信、文化的自信)、「2つの維持」(習近平を全党の核心とすることを維持、党中央の権威と集中統一指導の維持)を確実なものとするために全党員が自らを厳しく律して遵守すべし、としている。全党員、幹部がこの「条例」精神を強く自覚し、条例をしっかり守って、党と国家の各項目の任務に従事せよ、という。早い話が、習近平独裁に根拠を与える党内法規のようである。