インドのアップルストアに貼られたiPhone SEの広告(写真:AP/アフロ)

 ロイターは9月28日、米アップルの委託製造業者である台湾3社がインドでのスマートフォン生産に総額9億ドル(約1000億円)を投じる計画だと報じた

投資額の大部分をiPhone生産に

 「PLI(プロダクション・リンクト・インセンティブ)」と呼ぶインド政府の補助金制度を活用するもので、鴻海精密工業(ホンハイ)は約400億ルピー(約572億円)を、緯創資通(ウィストロン)は約130億ルピー(約186億円)を、和碩聯合科技(ペガトロン)は約120億ルピー(約172億円)を投資するという。

 このPLIとは、携帯電話や特定電子部品の国内生産を後押しするためにインド政府が拠出する補助金制度。2019~20年を基準とし、国内生産製品売上高の増加分に対して4~6%の金額を5年間支払うという。

 3社はこれを活用し、インドにおける生産能力の拡大を図る。ロイターによると総額9億ドルのすべてがアップル製品の設備などに向けられるかどうかは分からない。だが、事情に詳しい関係者は、その大部分がスマートフォン「iPhone」の生産に特化すると話している。

 iPhoneのインド生産については先ごろ、ホンハイ傘下の電子機器受託製造サービス(EMS)大手の富士康科技集団(フォックスコン)が南部チェンナイ近くに持つ工場で、現行モデル「iPhone 11」の生産を開始したと米テッククランチが報じた。

 ロイターの今回の報道によると、フォックスコンはインドで中国・小米(シャオミ)のスマートフォンも製造しているが、その生産体制に余力がある。こうした中、フォックスコンは政府のPLIを活用し、iPhoneの製造を拡大する可能性があるという。

 アップルがインドでiPhoneの製造を始めたのは2017年。当時はウィストロンが南部ベンガルールの工場で比較的低価格のiPhoneを製造していた。しかし、2019年にはフォックスコンも製造を開始した。ウィストロンも生産能力を拡大するなど、アップルは同国での生産量を増やしている。

 ウィストロンは8月に「iPhone SE」(第2世代モデル)の生産を開始した。現在、同モデルを月間20万台生産しているが、これを年内に40万台に増やす計画。一方、ペガトロンは、同社初のインド工場操業開始に向けて準備を進めているという。