イラスト:近藤慎太郎

 前回引き続き、「過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome 以下、IBS)」について解説いたします。

 IBSは、「精神的なストレスが原因で、排便の異常が起きる病気」です。下痢型、便秘型、混合型(下痢と便秘を繰り返す)、分類不能型の4つに分類されています。

 診断のためには「RomeⅣ基準」を用います。厳密に言うと、「腹痛が、最近3カ月の中の1週間につき少なくとも1日以上を占め、下記の2項目以上の特徴を示す」

(1)排便に関連する

(2)排便頻度の変化に関連する

(3)便形状(外観)の変化に関連する

 となりますが、なんだかとても堅苦しいですね。この基準を満たさないと絶対IBSじゃない、というわけではありません。大ざっぱであっても、ここ数カ月お腹の調子が悪いという人はIBSの可能性が十分あります。

 ここで一つ、大事な注意点があります。IBSは「大腸がん」や、安倍元首相が罹患していることで有名になった「潰瘍性大腸炎」など、大腸の他の病気をきちんと除外できた後に、「消去法的に診断される病気」です。つまり、除外するために大腸内視鏡などの検査を受けることが必要になるのです。

 ですので、便秘や下痢が長期間にわたって続く人はまず一度検査を受けて、肉眼的な問題がないことを確認するようにしてください。便秘や下痢があるけど、IBSだろうから検査しなくていい、ということにはなりませんのでご注意ください。実際に、IBS様の症状だったけれども、実は大腸がんだったという例は多数あります。

 ちなみに、IBSが大腸がんのリスクを上げるかというと、幸いなことにそれは否定的です。IBS患者を長期間にわたって経過観察しても、一般の人と比べて大腸がんは多くなかったと報告されています。