(英エコノミスト誌 2020年9月19日号)

20世紀は石油で動いていた。自動車も戦争も、経済も地政学もそうだった。
今、世界は新しい秩序への移行を加速しているエネルギーショックの真っただ中にある。
今年に入って新型コロナウイルス感染症「COVID-19」が世界経済を襲ったことで、石油の需要は2割以上減少し、価格が急落した。
その後は神経質な値動きの回復が見られるものの、昔の世界に戻ることはなさそうだ。
化石燃料の生産者は、自らの脆弱さに直面することを強いられている。
米石油大手エクソンモービルは、1928年から構成銘柄であり続けたダウ平均株価から除外された。
サウジアラビアなどの産油国では、財政収支を均衡させるためには、原油価格が1バレル70~80ドルの水準になければならない。
足元の価格は40ドルを辛うじて維持しているのが実情だ。
過去の石油不況と違うワケ
石油相場の不振はこれまでにも何度かあったが、今回は違う。一般の人々や政府、投資家が気候変動問題に目覚め、クリーンエネルギー業界が勢いを増しているのだ。
資本市場に変化が生じ、非化石燃料で発電するクリーン電力会社の株価は今年に入って45%上昇している。
金利が0%に近いことを受け、政治家も自然の仕組みを活用する「グリーンインフラ」の整備計画を後押ししている。
米国大統領選挙に民主党から立候補しているジョー・バイデン前副大統領は、米国経済の脱炭素化に2兆ドルを投じたい考えだ。