2015年12月12日、ニューデリーで首脳会談を行ったインドのモディ首相と安倍晋三首相(写真:AP/アフロ)

(山田 敏弘:国際ジャーナリスト)

 8月28日に安倍晋三首相が辞意を表明した直後から、メディアでは史上最長の7年8カ月にわたって総理の座にいた安倍政権の総括に力を入れた。

 そこでの安倍政権の実績に対する評価は、メディアによって賛否が分かれたものが少なくなかった。国内で言えば、消費増税や共謀罪の成立などがそうだ。加えて、「森友・加計」や桜を見る会の問題については、「十分に説明責任を果たせていない」という批判が全般的に根強い。

 外交・安全保障にかかわる分野についても国内メディアの評価はさまざまだが、実は海外からの評価は極めて高い。

 日本版NSC(国家安全保障会議)の設立や集団的自衛権の行使容認、特定秘密保護法制定などについて国内では批判する向きもあるが、米国などからの評価は相当高い。また安倍首相は、世界が「扱いに困っている」ドナルド・トランプ大統領と良好な関係を築いたことで、その外交手腕は世界中から注目されていた。日本が米国との良好な関係なくして存在できない事実を踏まえれば、安倍首相の対トランプ外交は日本でももっと評価されるべきである。

 そして安倍政権には、もう一つ評価されてしかるべき「外交的なレガシー」がある。安倍政権がイニシアティブをとり関係国に声をかけてスタートさせた対中戦略が、ここにきて一気に活性化する兆しが見えているのだ。「QUAD(クアッド=日米豪印戦略対話)」である。

 この「QUAD」とはいったい何か――。

対中国の4カ国連携

 この戦略対話とは、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4カ国の非公式の枠組みのことを指す。QUADは、2007年8月、第一次政権時の安倍首相が、インド国会で演説した際に提唱、日本とアメリカ、オーストラリア、そしてインドとの多角的な協力関係の構築を呼びかけたことに端を発している。

 安倍首相はその後、間もなく退陣してしまうことになるが、この方針は後を受けた麻生政権にも引き継がれ、そして民主党政権を経た後の第二次安倍政権でもこの4カ国の枠組みの維持が図られてきた。

 QUADは、自由で開かれたインド太平洋戦略のための「4カ国イニシアティブ」とも呼ばれ、安全保障における協力関係を強化することを目的にしており、これらの国による海軍合同演習も行なわれてきた。