連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第16回。“重症”の定義をめぐって国と東京都の見解が異なった背景に、診療報酬制度、医療費、病院経営の問題が見え隠れする──讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)がICUの診療報酬を掘り下げる。

 新規陽性者数24人、患者数463人、入院患者数278人、うち重症患者数11人(埼玉県9月4日現在)。

 新型コロナウイルス感染者数が緩やかに減少しています。第一波に比べて相対的に少なかった重症患者数(第13回参照)も、減少に転じています。ところで、この「重症患者」とは何をもって“重症”と言うのでしょうか。

NHKホームページより

 8月20日頃、国(厚生労働省)と東京都の“重症”の基準が異なるという報道が注目を集めました。それをめぐって、「わかりにくい」「東京都は国に合わせろ」「東京都は重症者数を少なく見せようとしている。けしからん」といった侃々諤々の意見がネット上に溢れました。

 (1)ICU(集中治療室)で治療、(2)人工呼吸器を使用、(3)ECMO(体外式膜型人工肺)を使用――この中のいずれかに当てはまる場合を“重症”と定義しているのが厚労省です。一方の東京都は、ICUにいる患者の中で、人工呼吸器もしくはECMOを使用していない患者を重症者の集計から除外しました。(2)か(3)に当てはまる患者だけを“重症”と定義したわけです。