自民党が勝利を収めた昨年7月の参議院選挙。開票結果を受けてインタビューに答える二階俊博幹事長(写真:つのだよしお/アフロ)

 2020年9月8日、二階俊博幹事長の在職日数が歴代最長(1498日)となった。政治の師・田中角栄元首相を抜いたのである。師匠の田中元首相は70年代後半から80年代半ばにかけて、暗躍する「闇将軍」として君臨したが、弟子にあたる二階氏は表舞台の最高実力者として汗をかいている。現下の「ポスト安倍」政局でも、菅義偉官房長官を次期首相に事実上内定させる剛腕ぶりを見せ、我が世の春を謳歌しているが、なぜこれほどまでに力を持つようになったのか。政治力の源泉を探る。

とにかく先手必勝

 8月28日午後、安倍晋三首相が辞意を表明した。辞意を固めたのは24日だが、28日以前には誰にも言っていない、というのが安倍首相の説明である。永田町も霞が関もメディアも辞意表明を受け、ハチの巣をつついたような騒ぎとなったのは周知の通りである。

 さて、この一大政局を第六感で察知していた人物がいる。

 二階氏である。

 8月17日午前、安倍首相が慶応大病院を訪問したことで一大政局は幕を開けた。この日以降、最高権力者の「体調不安説」は、現実に存在する「体調不安問題」に切り替わり、「ポスト安倍」をめぐる闘いがスタートした。

 二階氏は先手必勝を好む。安倍首相がしばしの静養から復帰した19日、間髪入れずに菅氏と会食している。菅氏とは6月から緊密に会談を重ね、呼吸を整えてきた。政局になると、信頼関係の深さが勝負となる。

 翌20日には安倍首相と岸田文雄政調会長が首相官邸で会談しているが、二階氏は先を越すように別の“動作”に入っていく。25日に予定されていた定例の党役員会を中止したのだ。稲田朋美幹事長代行とともに地元和歌山入りする翌週の出張日程もキャンセルし、さらに27日に予定していた安倍首相の連続在職日数歴代1位を祝う会も見送った。まるで辞意表明を察知していたかのような鋭い動きである。