退陣を決めた安倍晋三首相(3月14日の新型コロナウイルス感染症対策についての会見、AP/アフロ)

 安倍晋三首相の退陣表明で自民党の総裁選が降ってわいてきた。日本の運命の岐路であり、外国の軍門に下ってもいいという認識の総裁を選んではならない。

 他方で自民党の動きに刺激され合流問題を加速させたのが野党である。

 野党はここ数年、分裂・合流を繰り返してきたが、多弱の野党では国民の期待する論戦が展開されないことが分かった。

 多弱の野党では国際社会や日本の安全といった「国家の基本問題」に目を向ける余裕がなく、政府・与党を攻撃するマスコミ報道のネタ探しとそれをスキャンダルに仕立てる方策、そしてテレビ映りだけに目が向き、政治家というよりは単なる詐話師紛いの集団に成り下がっている。

税金の無駄遣い

 これでは、国会でまともな論戦が繰り広げられるはずもない。

 特に安倍政権の後半に至っては「安倍憎し」「安倍おろし」の感情むき出しで、モリ・カケや桜を見る会、検察官の定年延長問題に見るように「創られた偽情報」での論戦とも言えない罵詈雑言に終始した。

 日本の安全が脅威に晒されている現実の中で、憲法審査は避けて通れない。西修・駒沢大学名誉教授によると、平成23年から令和元年まで衆参両院の憲法審査会に投じられた総経費は約23億7000万円、うち人件費が約19億円である。

 しかし、審査会の開催回数は第196国会(平成30年常会)から第201国会(令和2年常会))まで各国会で衆参それぞれ大体1~2回、各回2分程度で、議論の「ぎ」さえ行われていない。

 いかに野党が憲法審査会を開きたくなかったかが分かる。

 第200国会(臨時会)の衆院では委員がドイツやウクライナ、エストニア、リトアニアを訪問した報告と自由討議3回(約2時間)を行い、次の第201国会の衆院では約2時間の自由討議を行ったことが特筆されるくらいである。

(上記数字は自民党「2020まなびとスコラ・オープン講座」による)

 一強多弱でも民主主義の日本ではマイノリティの声を大事にするために、質問時間の相当部分を野党に配分している。

 しかし、真に必要な質疑が行われない悲哀を国民はテレビ放映を通じて見てきた。